国内夜間MBAの振り返り Part3

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Part2.5より続く

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おかげさまで、2022年3月で東京都立大学大学院のMBAプログラム(経営学修士課程)を修了いたしました。本学のMBAについては、ネットに落ちている情報が少ないので、同期を見習って、入学を考えられている方向けに情報をまとめておきます。ただし、あくまで私の主観による推測も含まれますので、参考程度にされてください。内容的にほとんど不要だと思いますので、英訳は省略します。

3本の記事に分けたうちのPart3では、入学後の修士論文執筆についてまとめます。

研究調査の流れ

理想的なスケジュールで進めると以下のような形になると思います。都立大では論文執筆が必須ですので、その覚悟が必要です。

グループ研究:M1 4月~7月

前回の記事の補足として、M1前期には、6人程度のグループを作って模擬的な研究を行う、「グループ研究」というほぼ必修の授業があります。これが2年間の中で最も大変な授業だったと思います。その後の各自の修士論文研究のための基礎を作っていくために、「研究テーマやリサーチクエスチョンを設定し、調査を行って結果をまとめる」という一連の流れを、いくつかのグループに分かれて行います。必然的に、授業外で毎週グループメンバーで集まって、ディスカッションを行いながら進めることになります。特に発表直前には日付が変わるまでオンラインディスカッションを行う日もありました。ここでは自分の論文と直接関係がないテーマを扱いますが、「実務上のモチベーションや先行研究をベースとして、いかに学術的でリサーチクエスチョンを設定し、期間内に結論をまとめ切るか」という考え方を学んだことが、実際にその後の修士論文研究へ直結していきました。またデータ分析を行うつもりの人は、M1のときに、統計学、R、Bloombergなどを使う授業も受けておくと良いと思います。

研究テーマ設定・先行研究レビュー:M1 10月~3月

第一に、テーマ設定がとにかく鬼門です。「自分は研究を通じて何を明らかにしたいのか」を、とことん明確化していきます。私は研究のモチベーションが受験時からかなり明確でしたので、入学後はテーマ設定をほとんど変更することなく、修士論文の研究として成立しそうなサイズに調整していくだけで済んだ幸運なケースだと思いますが、人によっては入学後に根幹から見直しを図る必要も出てくると思います。

自分自身の研究テーマの設定は、学部に続けて進学する通常の修士課程であれば、一般的にM1前期の段階から早期に固めますが、都立大ビジネススクールでは、学部レベル経営学のバックグラウンドが十分でない人も多いため、通常はまずその基盤固めを行ったうえで、M1後期から徐々にテーマ設定を行っていきます。この段階では、5つの研究分野(戦略・組織・会計・マーケ・サイエンス)ごとに分かれて行います。この分野内でM1の最後に研究計画発表を行い、その結果によって修士論文の主査・副査が決定されます。M2では指導教官(主査)の先生のゼミに所属して研究を進めます。

なお、テーマ設定の最中で、研究分野を出願時に選択したものから変更していた人もいました。分野によらず、入学後に、いろいろな先生にどんどんメールで相談してみると良いと思います。主査と副査が異なる分野の先生となっていた人も多かったです。私の場合は、いずれも組織論の先生でしたが、水族館業界発展の歴史的経緯の部分については別途、個人的に懇意にしている他大学の先生からも助言を頂いていました。

第二に、先行研究レビューもとにかく時間がかかります。私の場合、入学前からM2が始まる前まで累計で100本程度、M2でさらに50本くらい読みました。全部を精読した訳ではなく、自分の研究に繋がってくる材料を拾い集めてくるイメージです。このとき、文献のタイトル・著者・出版社・出版年はもちろん、どのページからどの内容をもって来られるかというメモを一覧で整理しておき、原本にも付箋を貼っておくことが大事です。これを最後に確認しようと思うと地獄を見ます。文献管理ツールは、このくらいの量であればExcel(Access)で十分でした。また、論文中での文献引用の作法は、指導教官によって微妙に異なることがあるようなので、指導教官(主査)が決まった段階で早めに確認しておくと良いです。

論文執筆のポイントは、とにかく早期に、パワーポイントではなく文章の形で、議論をまとめ始めることです。指導教官の先生も何度もおっしゃっていましたが、パワーポイントだとページ切替わりの前後で論理が飛躍しがちになるのです。そのためテーマが決まったら、すぐにワードを立ち上げて、書けるところから書き始めるとよいです。

調査:M2 4月~9月

M2前期の7月に行われる中間審査に向けて、ゼミを通じた指導を頂きながら、先行研究レビューと予備調査を行っていく段階です。特に中間審査は、最終審査後の軌道修正がほぼ不可能なぶん、特にテーマ設定を厳しくチェックされます。私の場合は、中間審査でテーマも先行研究レビューの骨格もかなり明確になっていましたが、それでも研究計画に対して副査の先生から多くの鋭いご指摘を頂戴しました。それを受けて、最終審査に向けてさらに練り直しをしていく必要があります。

調査は、アンケートやインタビューを行ってデータを集めるか、既に公開されているデータを利用して分析して行うことが一般的だと思います。調査対象は自分で見つけてくる必要がありますし、かかる費用は基本的に自己負担です。8月~9月の夏休みをどれだけ有効活用できるかも1つの勝負です。私の研究の例だと、インタビュー自体はZoomのオンライン通話で行えたものの、それは実際の水族館を見ていた前提があって初めて成立したものです。できる限り、実地でリアルに五感を通じて感じ取ることが重要であるということは、水族館教育の観点からも自信をもって言えることです。

論文執筆の流れ

修論執筆:M2 10月~12月

調査結果を整理し、最終的な論文の形にまとめていく段階です。12月に入っても1文字も書いていないという強者の同期も居りましたが、私はM1の早い段階から先行研究レビューの内容をどんどん文章の形で書き起こしていたので、論文で使えるパーツがたくさん出来上がっていました。自分の頭の中で考えていることだと、先生も手を出しようがないのですが、文章の形でアウトプットしておけば、どこをどう直すかという組立てを先生も一緒に考えることができます。「とにかく書ききる」という強烈に前向きな信念を持ち続けられるかが勝負です。私自身も、まったく進まない時期だってありましたが、その一方で2週間で4万字アドオンした時期もありました。ただし後述する通り、最終的な成果物である論文を公開する前提で調査を行った場合、当然ながら執筆内容を調査協力者に確認いただく必要が出てくると思いますので、そのための時間も見込んでおく必要があります。

最後の追い込みでは、年末年始に17連休を取得しました。最終的には約17万字という、指導教官の先生もかつて見たことの無い分量の修士論文に仕上がってしまいました。この量になると、校正はWordの音声読み上げ機能を使わないとやっていられません。私は有料の読み上げツールを買いました。

最終審査:M2 1月~2月

書き上げた内容をスライドに落としながら、10分間で人に説明できるように整理するだけです。発表自体は論文がきちんと仕上がっていれば容易だと思いますが、細かな部分まできちんと理解しきっていないと、質疑で足をすくわれます。受ければ必ず合格するものではなく、きちんとした審査ですので、審査後に修正を求められる場合もあります。

論文の内容について

修士論文の公開・非公開は任意で選択できます。例えば、企業のデリケートな内容に触れるケース調査を行った場合、公開しないという選択ができます。逆に私のように、公開を前提として調査を行えば、最終的にPDFを東京都立大学図書館に納めることで、インターネットで公開されるようになります。

今後、私の具体的な執筆内容については、論文全文のPDFが公開された後に、今後の国内水族館業界への示唆も含めて書いていきたいと思います。

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