テクノロジー時代の水族館

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「DX(デジタル・トランスフォーメーション)で水族館から生き物はいなくなるか?」開催決定!
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水族館での生き物の展示について考える、オンラインイベントを開催して登壇します。昨年まで水族館で勤められていた、超ベテランの職員の方と私が対談する、私にとっては夢のようなイベントです。若手の皆さんをターゲットとしていますが、業界関係者含めどなたでもご参加いただけます。お申込お待ちしております!


業界関係者が「水族館において、生き物を飼育することの意義とは何なのか?」という疑問に対して、いよいよ真剣に向き合わなければならなくなる時代が来るでしょう。

イベント開催のきっかけ

今回このイベントを開催しようと考えた一番のきっかけが、大学院の授業で「水族館のデジタル化」を真剣に考えたことです。以前から、技術の進歩によって近い将来に、「水族館と同等の教育効果を持つコンテンツを、生き物の飼育なしに実現できるのではないか?」と疑問を持っていました。授業でこの疑問への回答に取り組んだことで、いよいよ水族館の存在に対する危機感が高まりました。

私自身がこの疑問を抱いたのは2018年のことでした。当時は所属する水族館ボランティア団体のコミュニティマネジメントについて真剣に悩んでいた時期で、「団体が今後も活動を継続していくために必要な要素」を探っていた時でした。結局のところそれは「自然や生き物とのつながりをいつまでも感じられる社会」の実現です。団体の存続のためには、葛西臨海水族園自体の存続が必要。そのためには水族館業界全体の存続、ひいては人々が水族館に対する存在意義を認めている社会が必要となります。それはすなわち水族館が自然や生き物とのつながりを感じるゲートウェイとしての役割を果たしている状態です。

しかし、この論理は「水族館というプロダクトありき」で考えている偏ったものです。水族館に代わる別のコンテンツが、自然や生き物とのつながりを感じるゲートウェイを実現できるのならば、わざわざ水族館で生きた生き物を自然から奪い取って展示する必要はない訳です。

バーチャル水族館の誕生

そう思って調べると、そのポテンシャルを持ったコンテンツが2017年にオープンしていたことに驚きました。しかも世界の中心地である、ニューヨークのタイムズスクエアという繁華街に現れたことに、その可能性を感じたものです。

ちょうどその年に迎えた、30歳の誕生日に、ニューヨーク水族館の訪問に併せて実際にそのコンテンツを体験したことで、私の人生において「真剣にこの疑問へ立ち向かっていく」ことへの決意を持たせました。

残念ながらこの8月に、そのコンテンツ “National Geographic Encounter” は閉業してしまいました。確かに、コンテンツの内容としては、まだまだ水族館の代替コンテンツとしては程遠かったかもしれませんが、しかし実際の生き物の展示なしに、自然や生き物へのゲートウェイとしての役割を果たそうと挑戦した姿勢は、将来的に既存の水族館業界を脅かすだろうと確信しました。

2020年の日本で

あれから2年、現在の私は縁あってNGOのキャリアデザイン事業において、動物園・水族館の職員を志す学生に向き合っています。「学生の夢を諦めさせない」という強い信念の下で行われているこの事業において、私は業界におけるどんな難しい問題であれ、学生へ真剣に問いかけていかなければなりません。もちろんその問題は自分自身にも返ってきます。

2年間で、第4次産業革命における技術進歩のインパクトがより鮮明になりました。そしてコロナ禍によって、自然環境を再現するために投入しているコストの回収に苦しむ水族館が、世界的に続出しています。にもかかわらず、2020年も日本では多くの水族館が新規開業や展示のリニューアルを行いました。

これから、水族館業界がいよいよ試されていくでしょう。私を含め、水族館産業に関わるY世代・Z世代は、それまでの世代よりもさらに真剣に、その存在意義へと向き合う必要があります。未来の水族館には何が求められ何が提供できるのか、そのための示唆を与えられるイベントを作りたいと思います。

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