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おかげさまで、2022年3月で東京都立大学大学院のMBAプログラム(経営学修士課程)を修了いたしました。本学のMBAについては、ネットに落ちている情報が少ないので、同期を見習って、入学を考えられている方向けに情報をまとめておきます。ただし、あくまで私の主観による推測も含まれますので、参考程度にされてください。内容的にほとんど不要だと思いますので、英訳は省略します。
3本の記事に分けたうちのPart1では、入学前の準備についてまとめます。
志望校選び
一般的な国内MBAは、ケーススタディ中心か、研究中心か、という軸で大別されますが、都立大は論文を書かないと修了できない、研究寄りの大学院です。
数多くの大学がある中で都立大を選んだ背景として、私の場合、いろいろな偶然が重なりました。まず、もともと「研究がしたい」という目的が明確だったという前提がありました。本ブログで昔から議論しているとおり、私は水族館ビジネスの社会性に注目しており、他のステークホルダーとどのように協働して価値を創出しているか(いわゆるコレクティブ・インパクト)に興味があったのです。そのうえ、私は水族館業界に深く関わっているけれど、ボランティアであるため目立つ実績がいまひとつないという状況下で、もっと業界へ深く踏み込んでいくために、何がしかのわかりやすいアウトプットを出したかったのです。
そこで、アウトプットとしてそのような研究論文へ取組める場を探した結果、母校にソーシャルイノベーションを研究しておられる先生がいると知り、先生の著書を拝読して、受験を決意しました。そして都立大は、MBAの中でもかなり学術研究に力を入れられるカリキュラムであり、さらに私が得意とする数学で受験でき、そのうえ何より出身校となれば、これ以上の選択肢はありません。9月入試に臨み、もしだめだったら、選考時期が遅い筑波や早稲田にも出願するつもりでした。
筆記試験対策
私の場合、理学修士保有→数学受験なのでかなりの特殊ケースではあるのですが、その方向けの情報がネットで全く見当たらなかったので、あくまで参考程度にまとめておきます。とはいえ、基本に忠実にやれば大丈夫だと思います。まずは公開されている過去問を見ればレベル感はわかると思いますので、そこに向けてきちんと計画立てて進めればいいと思います。
- 2019年5月~6月:本読み。書籍15冊+論文15本くらいインプット。
- 2019年7月:出願書類作成。水族館関係者・MBAホルダー等数名によるレビューを受けたうえで出願。
- 2019年8月:学部数学の復習、過去問練習。
- 2019年9月:受験当日。筆記試験と面接を同日実施。
- 2020年4月:入学
MBA予備校の利用も検討しましたが、「独力で問題ない」と判断しました。過去問を見て、筆記試験対策がほぼ不要だと思ったことと、もともと物理学で修士をとっており研究計画の立て方はある程度わかっていて、かつ必要なアドバイスも十分に得られる状況だったためです。ただ、レベル感として、筆記試験の数学は(数学科でなくとも)理系学部出身であれば容易に高得点が取れる内容なので、逆に数学以外の小論文を選択するのであれば、相応の経営学の特定分野に関する基礎的な理解が要求されるのだと思います。また、他大学・他専攻において筆記と面接が別日になっている場合では、解けなかった問題について面接で聞かれることもあるのかもしれませんが、都立大MBAは同日実施ですので、筆記と面接は切り離されている、すなわち筆記は純粋に点数として見られるものと推測されます。
研究計画作成・面接対策
私はもともと水族館経営について強い問題意識を持っており、その方面の分野の研究者とは交流がありました。そのため入学前の時点から明確だったモチベーションを文字に起こすだけでよく、入学後の研究においても大きな路線変更はありませんでした。先行研究として動物園・水族館の経営について研究されている方は少なかったものの、そのため逆に研究計画は作りやすかったです。論文はネットに落ちているものと、国会図書館での複写を入手してきました。そのうえで、もともと持っていた人脈をフル活用して研究計画書をレビューしていただきました。このとき、水族館・コミュニティマネジメント・起業家・MBAホルダーなど、異なるバックグラウンドを持つ複数の方の眼でチェック頂いたことで、客観的に完成度の高いものに仕上がったと思います。水族館はそもそも研究機能を有する施設ですから、分野こそ違えど研究慣れしている方が割とたくさんいたことも心強かったです。
これから受験される方向けに書くと、とにかく都立大は修了時の論文執筆が必須なため、「研究として成立するか?」が入学後の授業でも常に注目されます。そのためそれは入学前でも同じだと思います。論文の審査基準(当時)は以下の通りです。
- (テーマの適切性)学術上の適切なテーマが設定され研究目的が明確であること。
- (研究方法の適切性)研究目的に沿って学術的に適切な方法・手法によって分析されていること。
- (既存研究と関連付け)当該分野の既存研究がレビューされており、それと関連付けて論旨が展開されていること。
- (有用性)学術的な有用性が認められること。
- (結論の論理性)論文の構成と体裁が整っていること。論旨の展開が論理的であり、整合的な結論が得られていること。また、文章表現、図表、データ等が、適切に用いられていること。
- (研究倫理の配慮)研究計画の立案および遂行、研究成果の発表ならびにデータの保管に関して、適切な倫理的配慮がなされていること。
いずれにせよ、入試段階でそれなりの研究計画書を求められますので、始めからこれらを意識して作っていけば、面接で研究計画について質問を受けても対応できると思います。もちろんはじめから完璧なものである必要はなく、研究としての弱点を克服していくために大学での指導があるのですから、「なぜMBAか?なぜそのテーマなのか?なぜ都立大か?」あたりが一貫していれば問題ないかと思います。なお厳密に言うと、都立大では「修士論文」の代わりに「課題研究論文」という、4.の「学術的な有用性」が要求されない学位論文を選択することもできます。
あと遠方の人は、試験会場(南大沢キャンパス)周辺にホテルがない、おまけに京王線は年々不便になっているので、多摩センターあるいは橋本(ともに南大沢から2駅先)で前泊されて、ベストコンディションで臨まれると良いと思います。
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