「人々に対して問いを投げかけ、対話を生み出すこと、そして彼ら自身が自然や生き物とつながるために行動させること」が、私の行いたい環境教育です。
環境教育とは
世界は深刻な環境問題に晒されています。そこで私が行いたい環境教育活動について考えてみます。「4つの役割」で書いた通り、教育は1つの重要な使命です。
私が考える環境教育の目的は、「生物多様性を次世代へ受け継ぐ人材の育成」です。そのために、動物園・水族館は、人々に対して何をどのように伝えるべきか、考えてみたいと思います。
人とのつながり
世界的には、「動物園・水族館で生き物を生き物を飼うことに反対する」意見も出ています。特に1980年生まれ以降の若い世代は、他の世代よりもその割合が高いです。一方で、世界には、様々な国や地域が存在します。そこには漁業・狩猟や家畜など、その地域の人々に根差した、生き物との関わり方の文化があります。
そのため、異なる民族の間で、時に相容れない領域が存在します。世界には、イルカショーが嫌いな人、イルカの展示が嫌いな人、動物全般の展示が嫌いな人、動物を食することも嫌いな人、様々いますし、それらの程度の度合いもさまざまです。
ここで、互いを尊重し、感情論ではなく対話での課題解決が求められます。保全活動を行う主体は人なのです。人が生きていけなくなるような方法はよくありません。動物園・水族館は、単に生き物の生態を見せるだけでなく、その生き物の周りを取り巻く状況と、様々な文化的な人々とのつながりも、人々に対して客観的に伝える役割を持つと考えています。
行動に対する動機付け
生き物の詳細な生態や、野性での生育環境は、確かに、水槽の周囲のボード上の情報パネルで伝えられるかもしれません。しかし、人でしかできないガイド、それは人々の多様な感性を生かした、未編集の、かつその時しかできないガイドがあります。それこそが、生きた生き物を展示する水族館の役割です。
そして、水族館で活動していると忘れがちな視点ですが、生き物は、水槽の中だけにいるのではありません。来館者へ「水槽の生き物の面白さ」を伝えるだけでは、水族館の果たすべき役割として不十分です。来館者に対して、水槽の先に存在する、野性の本当の姿へ目を向けさせる必要もあります。ひいては、その環境に対して人々へ関心を持ってもらい、行動に移してもらうことも目指せるはずです。水族館・動物園は、そのためのきっかけ作りの場所でもあるのです。
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