所属団体の活動理念

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団体の活動紹介ページが更新され、活動理念が新たに公表されました。団体が来年度に向けた採用活動を始めたこともあり、この「現段階の活動理念」について、私の思うところを書きます。※あくまで私の解釈であり、公式な見解ではありません。

私は活動理念を、「活動に参画する人が常に問い続け、活動に関わるあらゆる人と語り合うための共通言語」と考えます。

活動理念の目的

私の所属団体は、「水槽の前で生き物についてお話しする」活動を行います。どのような「お話し」なのかを一言で表すとき、私は「生き物を観察するための視点の提供」という言い回しをよく使います。この表現は、活動内容をよく表し、それなりに理解してもらえています。しかし「その活動が何の役に立つのか?」という点については、なかなかイメージの共有が容易ではありません。

私は、活動理念を「団体の活動が何のためにあり、誰のためにあり、どんな価値をもたらしているのか」を語るための共通言語だと考えています。この理念は、ボランティアの有志が、活動に対する思いを結集させまとめたものです。約150名からなる団体において、全員がこの内容へ完全に共感することは不可能ですが、各人の思いと重なる部分は大きいだろうと思います。

◆ビジョン(目指すべき将来像)「人々が多様な生き物や自然環境の素晴らしさを、いつまでも感じられる社会」

◆ミッション(社会的責任)「共に楽しむ・学ぶ・つなぐ」
1. 共に楽しむ…生きものの観察を通して、人々と生きものや自然環境への理解や関心を深めあう。
2. 学ぶ…より楽しい観察のために、水族園と共に常にガイド内容の充実を図る。
3. つなぐ…水族園の教育普及活動に協力し、生きものと来園者の間をつなぐ。
(生きもの・自然)(T.S.V.・水族園)(来園者)

引用:東京シーライフボランティアーズについて

活動理念の解釈

「ミッション」は、私たちの具体的な行動指針であり、活動をそのまま表します。

私たちの活動は、端的に言えば「来園者と一緒に、展示生物を観察し、発見した面白さを共有する」ことです。つまり、第1の要素「共に楽しむ」にある「人々」の枠組みには、来園者だけでなくボランティア自身も含まれていると思います。さらに私は、水族園での学びは、内部に閉じず、人々が水族園の外へ出ていったときへと繋がっていなければならないと確信しています。水族園で感じたことを、私たちの実生活における行動へと繋げることこそ、私たちが水族園を訪れることで得られる真の価値ではないかと思います。自然や生き物の素晴らしさを感じ、それを守りたいと思わせるガイドが必要で、人の心を動かすために、ボランティアは学び続ける必要があります。

ボランティアの良さは、多様な属性の人材が集まることです。画一的な方法では、あらゆる人々の心を動かすことはできません。ロジックで粘り強く伝えることが得意な人もいれば、特に子供たちの心情の機微に敏感に寄り添うことが得意な人もいます。それぞれが、個性と特技を生かして、活動全体を作り上げていけることが、市民参画の最大の強みです。

「ビジョン」は、ミッションを実行した結果、実現に近づけられる社会の姿を現しています。

私たちの毎年の募集案内を見ればわかる通り、ボランティアはビジョンに共感したのではなく、活動内容に興味を持って参画しているケースが主流です。そのため、このビジョン実現は一種の理想論であり、もっと適切な表現があるかもしれません。そこで重要なのは、「このビジョンは真に目指すべきものなのか?真に目指されているのか?」という点について、まだまだ定性・定量の両面から議論が必要だということです。

活動理念の位置づけ

この「ビジョンの妥当性とその実現性」は簡単な問題ではないので、すぐに答えは見つからないでしょう。けれどこの問いへ向き合うことは、私たちの活動の真の目的が単に自己満足の域で留まらず、きちんと社会的意義をもたらしていることを明確にするためにきわめて重要です。そうでなければ、私自身でさえこの団体を存続させる意義は見出せませんし、団体は水族園、そして水族園を支える社会全体のあらゆる人々に対する説明責任を果たせません。

ボランティアは、入口において知識やスキルは必要なく、基本的に意欲と熱意さえあれば参画できます。しかし活動の中で、自ら学びを獲得(Input)し、それを即座に現場で実践(Output)することで、自らが解釈した理念に沿って一定の価値(Outcome)を生むこと、そしてこのサイクルを繰り返すことが、社会の人々に対する最低限の責務であり、それを果たすことが人々からの支援をも生み出します。

そして、「水族館・動物園が本当に必要なのか?」という根源的な問いへ正対するうえでも、ボランティア一人一人が常に自らへ問い、答えを追い求め続ける姿勢が重要ではないかと思います。このような姿勢は、なにも水族館や環境教育に限ったことではなく、特に非営利で、あらゆる社会課題へ取り組むうえで必要となる、至極基礎的な思考過程だと思います。

理念は静的なものでなく、時勢に応じて常に見直し、育てていくものです。特に「水族館・動物園の存在意義」は、真剣に問われる時期がまもなく来るでしょう。私たちはその時に慌てふためくのではなく、自ら問いを立て向き合う姿勢を今から持つために、この理念を使っていきたいと考えています。

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