コミュニティマネジメントの視点

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「居場所を見つけられる者、居場所を作れる者が生き残る。そして環境の変化によってその居場所がなくなっても、新たに居場所を見つけられる者、居場所を作れる者が生き残る。」

思い出

ブログを忘れていたわけではありませんが、優先度が下がってしまいました。一日を「少なくとも」54時間くらいに引き延ばしたい、というのは長年の願いです。

冒頭の言葉は、先日、私の所属するボランティア団体のミーティングにおいて出た話題です。ここから導かれる結論は、「コミュニティで提供しなければならないものは、全ての居場所ではなく、居場所を作りやすい仕掛けや仕組みである。」ということだと思います。

私が活動を始めた当初、団体は混乱期にありました。立上げ後5年が経過し、通常の活動も安定的に行えない状態でした。確固たる運営体制も確立されていない中、当時学生だった私は積極的にコミットし、周りのあたたかい方々と共に、力を合わせて活動基盤を築いてきました。

私のような若輩者がコアメンバへ仲間入りした背景には、たまたま誰も手を上げない状況下にあり、やりたい事を何でも実行できる環境が、大きな要因として働いていたと思います。

現場主義

私が参画してから3年ほどは、私は私自身に許された時間的余裕を最大限費やして、多少の困難も強引に乗り切ってきました。中でも、「なるべく多くのメンバとたくさん接する時間を確保する」ことを重視し、現場の様々な声をまとめて団体を動かしていくようにしてきたつもりです。この「徹底した現場主義」は、マネジメントのノウハウも特に知らない中で直感的に実践していたものですが、結果として功を奏していたと思います。もともと「自分自身の目で生物をよく観察すること」が、生物のガイドという活動においても最も大切な原点となることが、自然と気づかせたのかもしれません。

とはいえ、今振り返れば、(今でも若いですが)若さを武器に「ねじ伏せて」きたようなもので、もしやり直すなら、もっと賢く洗練されたやり口で立ち向かうでしょう。なぜなら、押し通してきた無理が、最近になって歪として表面化してきているからです。

団体のコアメンバは他にもいますが、私のコミット時間だけが異常に突出していました。それが良い結果に結びついている側面もありますが、「ノウハウの属人化」を加速させた罪は大きいです。つまり、「私以外が対処できない」事案が山積してしまったのです。しかし、ほとんどの人はライフステージの1つくらい持っているものです。やはり私も、団体へ割く時間を捻出できなくなってきました。正確には、私の場合「団体発展のために最も効果の高いこと」を考え抜いた結果、団体そのものの活動に対するコミットの削減を選択していますが。

そしてアドバイザへ

そこで、昨年度、これもまた強引に、私1人の後任メンバーとして2人に加わっていただくことにしました。もともと私が3人ぐらいの後任をまとめて引き受けていたので、現時点でようやく「適正な」分掌を目指せるようになった訳です。そして私は黒子としての「後方支援」に徹底することにしました。もちろん瞬間的に体制転換できる訳ではないので、今もなお時間をかけて、持続可能な体制を探っている最中です。

ここで直面する現実が、いまや最低限の活動実行も、それを支える最小限の運営体制も確立されており、誰かが手を上げなくとも団体自体はかろうじて継続できるようになってしまったことです。設立から10年以上経過し、いったん成熟したコミュニティだと、新しい仲間にとっても、すぐに参入できるような居心地のよい場所が既に存在するケースが多く、新たなポジションを自ら作っていく必要性はありません。けれどこの状況を放っておけば、活動はやがて瞬く間にマンネリ化し、社会の変化とともに、長期的な人材の定着、ひいては団体の継続が難しくなっていくことでしょう。

このような状況を打開するための、明確なブレイクスルーは、まだ見つかっていません。けれど、私はあえて新しいメンバーへ託すことを選びました。それだけでは無責任なので、私は最低限のモニタリングを行いつつ、黒子としてもっと地道な分野への参入を目論んでいます。

水族館がボランティアという形の市民参画を社会へ求めても、そこにコミュニティマネジメントのノウハウなんてほとんど蓄積されていないのが現状です。そもそも、「水族館がなぜボランティアを必要とするか、どのように人手を集め、どのように協調するか」という点について、水族館から提示される以前に、ボランティアひとりひとりが自ら問い直し、「私たちボランティアは何のために活動し、どのように活動し、何を目指していきたいか」を、明瞭に主張する必要がある時代が、まさに到来しています。その理念を自ら明確化できたとき、必然的に必要となる「居場所」が見出されていくのでしょう。

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