2018年東部水族館視察レポート(2)

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前編より続く
近々、水族館の存在意義とは何なのか、という核心へ迫る機会を持つことになります。そこで、過去に訪問した海外の水族館をいくつかの記事に分けて振り返ってみたいと思います。

視察の目的

2013年・2016年に、アメリカ西海岸のいくつかの水族館を訪れ、現地ボランティア活動の特色を知りました。
今回は、アメリカ東部で特に話題性のある水族館を訪ね、これからの水族館の役割について考えました。

行程

2018/9/22(土)-10/3(水)の10泊12日間の旅程の中で、以下の通り、全8館を訪問しました。

  1. New York Aquarium (New York) 9/23(日)
  2. National Geographic Encounter (New York) 9/23(日)
  3. National Aquarium (Baltimore) 9/24(月)
  4. John G. Shedd Aquarium (Chicago) 9/25(火)
  5. Ripley’s Aquarium of the Smokies (Gatlinburg) 9/27(木)
  6. Tennessee Aquarium (Chattanooga) 9/28(金)
  7. Georgia Aquarium (Atlanta) 9/29(土)
  8. New England Aquarium (Boston) 9/30(日)ホエールウォッチ・10/1(月)館内見学

各館の紹介

5. Ripley’s Aquarium of the Smokies (Gatlinburg)

  • 訪問前は、田舎の山のふもとにある小さな水族館が、なぜ「世界の水族館トップ10」に入るのか疑問だった。
  • 確かに、生き物の紹介も丁寧ではなかった。目玉となる海獣もいない。
  • しかしそこには、水族館×遊園地×博物館という、子供向けの遊び場と、アメリカ人の海とのつながりの歴史があった。それらが生き物と共に独特の世界を作り、田舎町の観光の中心地として存在していた。

小さな観光地に存在する、人と海をつなぐ独特の世界
小さな観光地に存在する、人と海をつなぐ独特の世界
水族館の生物展示と沈船の博物館的展示のコラボ
水族館の生物展示と沈船の博物館的展示のコラボ

6. Tennessee Aquarium (Chattanooga)

  • 目の前の大河川をきっかけに、地元の高原から海に至るまで壮大な旅を提供していた。
  • トリッキーな仕掛けも目玉の海獣も一切なし。ただただ水槽と解説パネルだけで、自然の美しさと、それを守ろうとする保全の取組みを伝えていた。
  • 海の豊かさは川の豊かさへ、水中の豊かさは陸上の豊かさへ、全てつながっていることを思い知らされた。

山奥から海に至るまでの長い旅路
山奥から海に至るまでの長い旅路
地元のダム湖の展示は、世界最大級の淡水水槽
地元のダム湖の展示は、世界最大級の淡水水槽

7. Georgia Aquarium (Atlanta)

  • 人気生物と規模と迫力によって人々の心へ強く印象付ける、という戦略を貫いた展示だった。
  • 23,800トンの水槽も、よく洗練されたイルカやアシカのショーも、そして人形劇のミュージカルによる生き物の解説も、特に子供たちの興味を呼び起こすために、最適な教材かもしれない。
  • 観察のためのシートが置いてあったけれど、活用しづらい内容だったのは残念。

人々の心へ強く印象づける規模と迫力
人々の心へ強く印象づける規模と迫力
ジンベエザメも泳ぐ全米最大の巨大水槽
ジンベエザメも泳ぐ全米最大の巨大水槽

8. New England Aquarium (Boston)

  • ホエールウォッチでは、たとえ生物の動きがわずかしか見えなくても、自然界の本当の生き物が持つ、人々を魅了する絶大な力を実感した。
  • 海洋調査・保全の取り組みはまさしく世界の先端を行っていることが伝わった。
  • 水槽横の情報パネルには3枚に1枚程度の割合で、“What you can do”など、来館者へ行動を促進するメッセージが書かれており、環境保全の担い手を1人でも多く増やそうという信念を感じた。

あらゆる方法で環境保全活動を拡大する Global Leader
あらゆる方法で環境保全活動を拡大する Global Leader
結びのパネルには「共に次世代へ受け継ごう!」の力強いメッセージ
結びのパネルには「共に次世代へ受け継ごう!」の力強いメッセージ

総括

  • 個性あふれる水族館ばかりでした。個人的な好みはいろいろありますが、良い悪いではなく、これこそ水族館の多様性です。
  • もちろん今後淘汰される所も出てくると思います。具体的には、よいコンテンツを開発し発信できる水族館だけが生き残る時代が近いでしょう。特に、巨大水槽や人気生物のショーだけでは差別化が難しい。しかも、これこそはバーチャル技術の得意分野。
  • 大切なのは自分の園館の価値・セールスポイントを明確にしつつ、他の施設とコラボして良い部分を取り込んでいく戦略ではないかと思います。まず自分たちがどういうミッションで展示を作っているか、明確に発信することから。
  • 来館者による自然に対する思いを「シェアしよう!」が流行り。思いがけない共鳴を生み出すきっかけとなるかもしれない。日本もこの流れに乗りたいところ。

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